花咲舞が黙ってない

『花咲舞が黙ってない』という番組が4月からやっている。
確か日本テレビで水曜日の22時からだったと思う。
原作者は半澤直樹でお馴染の池井戸潤氏
ご存知の通り彼は銀行出身なので、彼の作品を読むと、もともと銀行にいた私等はとてもリアルで面白い。銀行にいた頃から大ファンでよく読んでいた。

今回の『花咲舞が黙ってない』は杏が演じる本店の臨店セクションにいる若い女子行員が支店を訪問して問題を解決すると同時に、誰もが言いたくても言えないような事をズバッという話である。
まあ半澤直樹の女性版かな、という感じである。

池井戸潤氏の話は、私のいた当時の昔の銀行ではありそうだし、あってもおかしくない話である。例えば今回の『花咲舞が黙ってない』の第1話は、支店で現金を多くお客さんに払ってしまったという事件だが、保身のためそれを支店長が自腹を切ろうとする等は銀行で勤務していると、なんかありそうな話である。
以前このコーナーで銀行員も間違えるという事例を書いたら
『世間では銀行は間違えないと思っているし、そんな事があるはずない』
と言われた。しかし銀行もお客さんに多く渡してしまう事もあるし、それを自腹で補填しようとするお馬鹿な支店長もありそうな話なのだ。

現金の入出金は機械がやっているので現金って合わないはずがないし、仮に合わなくても記録が残っているからほぼ原因は解明できる。だから過不足がでてはいけないのだ。よく一円でも合わないと帰れないというが、合わせるのに時間がかかっているから帰れないだけで、必ず合うから絶対帰れるのである。
仮に合わなかったら、それは当然できるはずの事ができなかったという事になるからとても印象が悪い。間違いなくマイナスがつく。
銀行は減点主義で一度マイナスがつくと二度と上に上がれない。
だから、自腹を切ろうというお馬鹿な支店長がいても不思議ではないのだけどね。

『花咲舞が黙ってない』はネットによると初回視聴率17.2%で2回目が14.7%らしい。半澤直樹のようなお化け番組になる事はないと思うが、銀行の内情がリアルにわかるこういった番組を皆さんがみてくれるというのは大歓迎である。

今回はちょっと時事話、次回から新規銀行についてだ。

積立この不可解なもの その5

『先生、積み立てってそんなにダメなのかい』
二杯目のハイボールを飲みながら社長が言ってきた。
前々回までだいぶ積み立ての悪口を言ったので、社長もちょっと考えているみたい。
でも積立預金は決して悪魔の商品ではない。積立預金が信用金庫の戦略であるならば、こちらも戦略的に積立預金をすれば良い。
その一つが前回話した目的の為の積立預金である。
それともう一つはコミュニケーションのための積立預金である。

信用金庫で口座を作ると、彼らは必ず積立預金を依頼する。もし作るならば、目的を明確にした積立預金にして、信用金庫に集金に来てもらう。面倒でも絶対に自動引き落としにしてはいけない。毎月必ず集金に来させて、現金を渡すのだ。その時、担当者を捕まえて、経営者自らが担当者と話す機会をつくるのだ。これはコミュニケーションの為の積立預金で意外と重要なのだ。

通帳を渡すとか、お金を渡す事務は奥さんや、経理の担当者がやるので良い。ただ信用金庫の担当が来た時に必ず経営者が会って欲しい。
経営者も忙しいが、毎月の集金日を決め、または何日の何時頃に来てくれと時間を決め、そこで10分でいいから話す。
『えっ?10分でいいの』
そう10分でいいのです。だいたい1日30件近く積立を集金している信用金庫のお兄さんは1時間も2時間も時間がとれない。だから1か月10分で良い。

担当者と話す内容は何でも良い。ただ間違っても日本経済の話などはしてはいけない。面白くないし、多分先方も知っているだろう。できたら業界の話が良いかな。担当者って意外と取引先企業をとりまく業界の事とかは知らない。だから意外効く。新製品がでたらサンプル等を持たせるのも良い。時々積立預金を集金しているのに、その企業の業種もわからない担当者もいる。だから教えてあげるのだ。
『うちは○○だよ』って
そんな他愛もない話が、後で融資を受ける時に意外と効果がある。

そもそも毎月集金に来ていると、半年に一回くらいは
『借りませんか?』と言われる。
こちらから何も言わなくても、向こうが言ってくるのだ。
要するに融資をお願いする立場からお願いされる立場になるのだ。
積立預金を上手く使い銀行との関係が深めていくのだ。

積立この不可解なもの その4

今まで散々積立預金の事を悪く書いてきたので、今回はやっていて良かった積立預金。
積立預金は使う時期と目的がはっきりとしているならばむしろ
『やっていて良かった』
という事になる。

例えば、納税資金とか賞与資金等である。退職金はいつ退職するか定かでないケースが多いので、積立預金で貯めるのはあまりお勧めしない。
納税とか賞与というのは時期が決まっているし、金額もだいたいわかるでしょう。
だったら余裕があるなら今から半年後や一年後へ向けて積み立てするのも良い。
ただその時は銀行員に
『○○の目的で積み立てするから○月に解約するよ』
と事前に話しておくことをお勧めする。そうしないと降ろす時に少し苦労する。

資金が必要な時期が明確でその目的で積み立てするなら必要な時に慌てずにすみ困らない。そんな話をしたらうちの社長
『先生、車買いたいから積み立てするよ』ってきた。
『社長、積み立てしなくても、ローン組めば明日からでも新車に乗れますよ』
『あっ、本当だ』
もちろん税務上の問題もあるので車を買うのにローンを組むのが常に正しいとは言えない。
でもどうせ積み立てるならその分ローンで払うのも同じと考えるなら積み立てしない方が良いかもしれない。なぜならすぐ乗れるから。
積み立てが効力を発揮するのは支払時期が決まっている場合だ。

そもそも積立預金って個人向けの商品だと思う。個人なら、子供の入学金や自宅購入、リフォームとライフスタイルに応じて資金が必要になってくる。それをカバーするのが積立預金。昔は金利も高かったから
『えっ?こんなに利息ついたの?やっていて良かった』
という事になったのだ。
個人は強制的に積み立てて消費しないようにする。それがお金を貯める秘訣。
でも法人はお金を貯めるより、そのお金を再投資し、更に利益を追求する。
だから個人の貯蓄の考えを法人にもってくるとちょっと失敗する。
法人は○年後にまとまった資金が必要になるなんて発想はあまりないし、そういった資金はむしろファイナンス資金として調達するのが現実的だと思う。

『社長、わかります?』
『え?先生そんな事より、飲み行こう。再投資だろ。』
だめだこりゃ。