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新規銀行取引について

今回からしばらく銀行を増やすという話。
実は以前、私の顧問先の社長に銀行を増やしましょうという話をしたら
『別に困ってないし、面倒だから一つでいいだろ』
と言われた。

しかし、面倒かもしれないが、銀行との取引で、複数行との取引は基本で、大前提なのである。この場合の取引とは、決算書を見てくれる銀行と言う意味であり、単に預金口座があるということではない。
複数取引だと銀行同士の競争が働くので銀行間のパワーバランスを考えるためにも必要。。
何より一方の銀行がだめになった時もう片方に、と言うリスク分散がはかれる。
銀行取引は思ったより属人的な部分があり、スキルの高くない担当者に当たってしまうと限りなく不幸。担当は選べないのだから、きちんとリスク分散させるためにも複数行と取引すべきなのだ。

一つの銀行としか取引していない会社の経営者には、銀行を増すとか、銀行と交渉をする事に罪悪感を感じる方がいる。でもそんな必要は全くない。
なぜなら、借入というのは企業にとって
「資金を仕入れる」
ということであり。銀行は企業にとって仕入れ先だからだ。

『社長、仕入れする時って相見積もりとるでしょ?』
という事です。
相見積もりをとれる関係の銀行が複数ないと、スキルの低い担当者になった時にとても不幸なことになる。
『いや、別にそんな事ないよ』
と思っている経営者の方、それは不幸に気が付いてないだけです。
担当者が変わって
『前の、担当者良かったな』
と思った経験ってあるでしょ。一行取引だと、そんな担当者とも当たり前のように付き合う事になってしまう。そうすると結局銀行と疎遠になってしまい、資金調達のタイミングを逸してしまうのである。

では、具体的にどんな銀行と取引をしたらいいの?
いくつの銀行と取引したらいいの?という話だけど
その辺は次回

積立この不可解なもの その5

『先生、積み立てってそんなにダメなのかい』
二杯目のハイボールを飲みながら社長が言ってきた。
前々回までだいぶ積み立ての悪口を言ったので、社長もちょっと考えているみたい。
でも積立預金は決して悪魔の商品ではない。積立預金が信用金庫の戦略であるならば、こちらも戦略的に積立預金をすれば良い。
その一つが前回話した目的の為の積立預金である。
それともう一つはコミュニケーションのための積立預金である。

信用金庫で口座を作ると、彼らは必ず積立預金を依頼する。もし作るならば、目的を明確にした積立預金にして、信用金庫に集金に来てもらう。面倒でも絶対に自動引き落としにしてはいけない。毎月必ず集金に来させて、現金を渡すのだ。その時、担当者を捕まえて、経営者自らが担当者と話す機会をつくるのだ。これはコミュニケーションの為の積立預金で意外と重要なのだ。

通帳を渡すとか、お金を渡す事務は奥さんや、経理の担当者がやるので良い。ただ信用金庫の担当が来た時に必ず経営者が会って欲しい。
経営者も忙しいが、毎月の集金日を決め、または何日の何時頃に来てくれと時間を決め、そこで10分でいいから話す。
『えっ?10分でいいの』
そう10分でいいのです。だいたい1日30件近く積立を集金している信用金庫のお兄さんは1時間も2時間も時間がとれない。だから1か月10分で良い。

担当者と話す内容は何でも良い。ただ間違っても日本経済の話などはしてはいけない。面白くないし、多分先方も知っているだろう。できたら業界の話が良いかな。担当者って意外と取引先企業をとりまく業界の事とかは知らない。だから意外効く。新製品がでたらサンプル等を持たせるのも良い。時々積立預金を集金しているのに、その企業の業種もわからない担当者もいる。だから教えてあげるのだ。
『うちは○○だよ』って
そんな他愛もない話が、後で融資を受ける時に意外と効果がある。

そもそも毎月集金に来ていると、半年に一回くらいは
『借りませんか?』と言われる。
こちらから何も言わなくても、向こうが言ってくるのだ。
要するに融資をお願いする立場からお願いされる立場になるのだ。
積立預金を上手く使い銀行との関係が深めていくのだ。

積立この不可解なもの その4

今まで散々積立預金の事を悪く書いてきたので、今回はやっていて良かった積立預金。
積立預金は使う時期と目的がはっきりとしているならばむしろ
『やっていて良かった』
という事になる。

例えば、納税資金とか賞与資金等である。退職金はいつ退職するか定かでないケースが多いので、積立預金で貯めるのはあまりお勧めしない。
納税とか賞与というのは時期が決まっているし、金額もだいたいわかるでしょう。
だったら余裕があるなら今から半年後や一年後へ向けて積み立てするのも良い。
ただその時は銀行員に
『○○の目的で積み立てするから○月に解約するよ』
と事前に話しておくことをお勧めする。そうしないと降ろす時に少し苦労する。

資金が必要な時期が明確でその目的で積み立てするなら必要な時に慌てずにすみ困らない。そんな話をしたらうちの社長
『先生、車買いたいから積み立てするよ』ってきた。
『社長、積み立てしなくても、ローン組めば明日からでも新車に乗れますよ』
『あっ、本当だ』
もちろん税務上の問題もあるので車を買うのにローンを組むのが常に正しいとは言えない。
でもどうせ積み立てるならその分ローンで払うのも同じと考えるなら積み立てしない方が良いかもしれない。なぜならすぐ乗れるから。
積み立てが効力を発揮するのは支払時期が決まっている場合だ。

そもそも積立預金って個人向けの商品だと思う。個人なら、子供の入学金や自宅購入、リフォームとライフスタイルに応じて資金が必要になってくる。それをカバーするのが積立預金。昔は金利も高かったから
『えっ?こんなに利息ついたの?やっていて良かった』
という事になったのだ。
個人は強制的に積み立てて消費しないようにする。それがお金を貯める秘訣。
でも法人はお金を貯めるより、そのお金を再投資し、更に利益を追求する。
だから個人の貯蓄の考えを法人にもってくるとちょっと失敗する。
法人は○年後にまとまった資金が必要になるなんて発想はあまりないし、そういった資金はむしろファイナンス資金として調達するのが現実的だと思う。

『社長、わかります?』
『え?先生そんな事より、飲み行こう。再投資だろ。』
だめだこりゃ。