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接待事情 その4

どこの業界もそうだと思うが、銀行が接待する時は、何かのお礼か、お願いである。
あまり多くない交際費の予算なので有効的に使おうとする。
今はどうかわからないが、昔は『床の間を背負って』という言葉があるように、和室で個室が定番だった。予算は1人あたり1 万円以内。意外とセコイ。だいたい少し高級そうだが、あまり高くない割烹っていうのが定番だった。
当然お土産を手配するのも担当者の仕事。お土産は相手の家族構成を考え、荷物にならないもの、珍しいものなどをチョイスする。かさばって、重いもの等完全にNGだ。

接待で担当者が1番困るのは、自分が偉いと勘違いして、無理難題を接待の場に持ちだそうとする支店長だ。だいたいそういう人は、本部や本店の経験が長い人が多い。
現場の経験が少ないからお客さんとの距離感や微妙な呼吸が掴めない。また本店や本部の人は支店を格下に見ているから、支店のお客さんの事など何とも思ってない。
そもそもお願いのための接待だからわからなくもないが、品性がないケースもある。
バッティングしていて二者択一を絞ってもらう接待ならわかるが、ニーズも全くない完全なNOをYesに変えてもらおうとする接待だから、苦労するのは担当である。

例えば、担当者が何度お願いしても借りてくれない。そうすると
『よし、接待しよう』ということになる。
でもお客さんだってバカじゃないよね、そんな時に接待の話をしたら、やんわりと断ってくるだろ普通は。それが、NOのサインってわからないから、支店長は担当に
『接待のひとつも決められんのか』となる

そうなると担当もお客さんに泣きつくわけ。お客さんも担当者がかわいそうだから、
『接待の場でお願い事の話しをしないならいいよ』となる
それを支店長に伝えるのだけど、お客さんとの距離感が掴めない人はそれがわからない。
宴席が盛り上がった頃、するんだよ
『担当からお願いしている件ですが・・・』
不愉快な顔をするお客さん。でもそれがわからない支店長。青くなる担当者。

翌朝
『しっかりとお願いしたから、借りてくれるぞ』という支店長と
『なんなのお宅の支店長は』というお客さん
挟まれて苦労するのは、だいたい担当者なのだ。

接待事情 その3

銀行もお客さんを接待する。各支店に交際接待費の枠があってその範囲で過剰にならないような接待はする。
接待をするのは、だいたいお願いがある時とお礼する時だ。
以前話したけど、事前申請に許可を取らないといけないので、たまたま一緒になって
『払っておきますよ』とか。夕方少し遅くなってしまい
『たまには飯でも』なんて言うのはまずない。そもそも銀行員はセコイから自腹は切らない。

各支店の接待の予算は、支店規模、業績、利用実績で決まる。そしてその予算の利用先は支店長に一任されているから支店長も業績は頑張るし、予算枠確保のためそれを使い切ろうと頑張る。時々私的な飲み会の費用をそこから流用しようとするおバカな支店長もいるけどね。だいたい2月になると3月までに使わなければいけない予算のために支店長も飲む相手を探したりする。同一先で何回も接待すると問題になるから意外と選定は難しい。

こんなことがあった
創業時から40年、ずっと取引をしてくれているある建設屋のK社長。決して大きい取引ではなかったが愚直なまでに私のいた銀行を愛して下さっていた社長だった。
日頃のご愛顧の感謝と、たまたま期末の予算消化のためにそこを接待する事になった。でも後で聞いたら銀行から接待されたのは初めてだったらしい。
先方は社長と息子の専務。こちらは支店長と私。場所は都内の料亭。

開宴して20分くらいして支店長が席を外した時に、先方の社長が改まって
『ところで、今日の趣旨は何ですかね?』
『え?』
『銀行からの接待と言えば、取引打切りと相場が決まっている。今日は倅と覚悟してきた。』
思わず笑ってしまった。
『社長、そんな事一切ありませんよ。日頃のお礼です』
と何度も繰り返しやっと納得していただいた。まさか予算消化とも言えないし。

以前は接待してその場で取引解消を告げるという事もよくあったけど、今はそんな事はあまりない。だいたい取引を解消するのにお金をかけたりしない今は。
ひどい時はお客さんを銀行に呼び出してスパッと切ったりする。
だから取引を解消されるとか、あまり心配しなくて良い。
むしろ無理難題を飲み会の席で言うことがある。
次回はそのあたりの話をしよう。

接待事情 その2

よく聞かれる質問に、
『銀行員にはどんな接待したら良いですか?』というのがあります。
結論から言うと、銀行員を接待する必要はない。
銀行員を接待すると、
『融資がでやすくなる』
『難しい融資が簡単にでる』と思っている方。そう貴方。
そもそも銀行員を接待してもあまり変わらない。まぁ融資も結論が少し速くなるとか、頼んだことをほったらかしにする事はなくなると思うよ。
でも融資のNOの結論がYESになることは絶対にない。

昔と違って今の銀行では、融資に個人の判断が重視されることはあまりない。
重要なのは格付けである。
銀行では、お客さんから決算書をもらうと、それをコンピューターで入力する。銀行は何万社のデータがストックされているので、同業他社のデータと比較してその会社をランク付けする。簡単にいうとそれが格付け。銀行によって異なるが、だいたい10~20段階に分類される。大雑把にいうとその格付けで、融資ができるかどうか、いくらまでよいか等がだいたい決まってしまう。だから融資の判断で大事なのは決算書なのだ。
昔は格付けなんか無かったから、融資判断に個人の(主に支店長)裁量がとても大きかった。でも今はシステマチックに決まる格付けが融資判断に最重視されるのだ。
だから接待しても融資の結論はほとんど変わらないのだ。
そんな話をしたら、うちの社長
『接待したら、その格なんとかっていうのが良くなるんじゃないっすか?』
あのねえー。ならないよ。

銀行員を接待するという事に関していえば、今はコンプライアンスがうるさいから、銀行員も接待を受けるのは慎重。下手に過剰な接待を受けたりすると、首が飛んでしまう。銀行は虚礼廃止で年賀状もだせない。銀行員同士も年賀状なんてやりとりしないよ。だって12月30日まで一緒にいて1月4日にはもう会うんだよ。出さないって。

前回も書いたけど、接待を受けると記録に残すのがルール。3,000円以上の接待を受けると必ず書類で残しておく。金融庁の検査が来ると、それは必ず見られる。同じ会社が何回もあったらめちゃくちゃ印象悪いだろう。それに接待を受けた前後にもし融資の取り組みなんかあったら大変だよ。片岡愛之助みたいな検査官に、それこそ料理の内容まで聞かれるよ。

まあ融資判断の結論も変わらないし、先方も望んでないのだから、銀行員を接待する必要はあまりないよ。