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積立この不可解なもの その3

『どうしたんですか社長。随分と嬉しそうですね』鼻歌まじりの社長に聞いた。
『いや、○○信金がいい提案を持ってきてさ』
『どんな提案ですか?』
『いやあ、満期になった積立で信用金庫の株買えっていうんだ。よくきいたら年5%の配当つけるらしいぜ。買いだろ先生』
『株って要するに出資ってことですよね』
『そうその出資だよ』
『いくらくらいやるのですか?』
『いや200万円全部だよ』
『え?』

積立を集める信用金庫。満期がくるとそれを出資に振り替える依頼をすることがある。
利回りも5%と高いし、信用金庫が潰れなければ、額面割れしないし、しばらく使う予定のないお金だからまあいいか。しかし実はこれがとんでもないことになることもある。

確かに利回りは高いし、額面割れしないし。でもそのお金をずーっと使わないんですか?
というお話です。積立で貯めたお金って、満期がくるとなんか嬉しい。自分のお金だけど、得した気分。そこに5%の高利回り。こんな良いことあっていいの?
でもちょっと考えるととても怖い。信用金庫への出資を、上場している銀行の株を買うのと同じと考えると大火傷しますよ。
何故って換金するのがとても大変なんです。普通の株は市場で売却できますが、信用金庫への出資金は売却できません。換金する方法は①誰かに(信用金庫のお客さん)譲渡するか②信用金庫に買取ってもらうか(自社株の償却)の2つしかありません。

そもそも譲渡するっていっても相手がいなければ譲渡できません、1万円とか2万円なら譲渡先をさがすのも問題ないでしょうが、200万円となると結構大きいですよ。また2つ目の信用金庫に買取ってしまうのは、総会の決議事項なので、すぐには無理です。そもそも社員総会なんて年2回くらいだろ。要するに引出しができないってことですよ。
余談ですが、ある私のお客さんが、信用金庫でお金を借りようと思って断られたので、出資金を担保に貸してくれ、とお願いしたら軽く断られましたよ。自分が発行した株に金銭的価値がないと言っているのと同じですよね。

『社長、下ろせないリスクを考えてやって下さいね』
『・・・・・』

積立預金、毎月少しずつ増えていくけど、
借入金利を上げるし、解約させてくれないし、借入の返済に回されちゃうし、挙句の果てに良く分からない株にかえられちゃう。変な商品。メリット全くないの?といえば、そんなことはない。
次回はやっていてよかった積立預金

積立預金この不可解なもの その2

積立預金に関するお話。第2弾
なぜ積立預金が怖いのか。これは積立預金に限らないが、銀行の定期預金は簡単に解約することが出来ない。これが恐ろしい理由だ。
『知っているよ。満期まで駄目だろ』
という声がきこえそうだが、実は満期になってもダメなのだ。
借入先の関連定期といって融資のある先の代表者やその家族の定期預金を基本的に銀行は解約させない。何故か

実は銀行は融資している会社の返済が一回でも遅れると保証人になってる代表者の定期預金や積立預金を強制解約して返済に充てることができるのだ。
『マジ?』
という声が聞こえそうだが、マジです。銀行取引約定書と保証書という書類にそれは明快に書いてあり、社長はしっかりとサインをしているはずなのだ。
その他に会社の住所変更をしなかったり決算書を出さなかったりしても契約書上は返済に充てることができる。

もっともいきなり積立を解約し返済に充てるような強引なことはないと思うけどね。
でも契約上できる。
だから銀行は解約したいというと必死になって抵抗する。
『定期解約しなければいけないほどお宅の資金繰りは厳しいのですか?問題ですねぇ』
というトーンで来る。
問題なのは解約させない銀行なんだけどね。得意の問題のスリカエ。

『そもそも担保に入れている訳でもないうちの積立を解約するのに何で』
と思うのですが、銀行にとって定期や積立を解約させる事は、その会社に融資するのと同じと考える。だからいきなり解約するのは、とても嫌がる。いきなり
『今日貸してくれ』というのと同じ。駄目だろ。
え?机をたたいたり、大声出さないのに素直に解約に応じてくれた?
それは、会社の内容が良いか。担当者が、ぼうーとしていたかのどちらかだね。

でもわかったでしょ。一生懸命積立預金を集める理由が。だって集めれば集めるほど銀行の債権管理上プラスになるのだから。
『ウ〜ン。不可解な積立』
その不可解さはまだまだつづく

積立預金この不可解なもの

『おはようございます。●●信金です。積立の集金です』
例の信用金庫のお兄さん朝からハイテンション。
『あいつ集金の時は元気だよな。融資の時にもっと元気出せ』と社長。
『まぁまぁ』
『うちの嫁が先月掛金増やしてやったから元気なんだよ』
『え?増やしたの』と私
『しょうがねえよ、俺はダメって言ったら、あいつ嫁に泣きつきやがって』
『ダメですよ社長。信用金庫の戦略にのったら。積立は彼らの武器ですから』
ということで、今回から積立の話。

信用金庫は、一生懸命積立預金を集めている。うちに来るお兄さんなんか自転車で1日30件近く集金しているらしい。大卒の職員にそんなことさせて、コスト大丈夫?と思うけど、実はこの積立預金、信用金庫にとっては立派な武器なのだ。積立預金の怖いところはどんどん貯まってしまうところ。恐ろしいことに、積立預金をしていくと借入の金利が上がっていくのだ。

『え?』と思うでしょ
専門的に言うと実質金利という考え方なのだが、簡単に言うと積立している分、余分に借りさせられているという事だ。例えば借入が1,000万円で積立が200万円ある会社。これは本来800万円の借入でよいのに1,000万円借りさせられているということだ。つまり800万円の借入に1,000万円の金利を払っているのと同じことだ。

『そんなこといったって積立に金利つくだろ』
『社長、預金の金利と借入の金利ってどのくらい違うか知ってます?借入金利って預金の100倍から200倍くらいですよ』
『・・・・・』
『今後、積立と借入が両方とも同じ金額になったらどうなると思います。それって自分のお金使うのに金利払っているって事ですよ』
『・・・・・』
『考えてくださいよ。買い物するのに自分の財布からお金出すのに手数料とられたらどうします?社長。消費税反対なんて言ってる場合じゃないでしょ』

積立預金は信用金庫にとっては金利をあげるための効果的な戦略。
恐ろしい商品ですね。
でも、積立預金の本当に怖ところは実はこれだけでない。
その恐ろしさは、次回につづく