『どうしたんですか社長。随分と嬉しそうですね』鼻歌まじりの社長に聞いた。
『いや、○○信金がいい提案を持ってきてさ』
『どんな提案ですか?』
『いやあ、満期になった積立で信用金庫の株買えっていうんだ。よくきいたら年5%の配当つけるらしいぜ。買いだろ先生』
『株って要するに出資ってことですよね』
『そうその出資だよ』
『いくらくらいやるのですか?』
『いや200万円全部だよ』
『え?』
積立を集める信用金庫。満期がくるとそれを出資に振り替える依頼をすることがある。
利回りも5%と高いし、信用金庫が潰れなければ、額面割れしないし、しばらく使う予定のないお金だからまあいいか。しかし実はこれがとんでもないことになることもある。
確かに利回りは高いし、額面割れしないし。でもそのお金をずーっと使わないんですか?
というお話です。積立で貯めたお金って、満期がくるとなんか嬉しい。自分のお金だけど、得した気分。そこに5%の高利回り。こんな良いことあっていいの?
でもちょっと考えるととても怖い。信用金庫への出資を、上場している銀行の株を買うのと同じと考えると大火傷しますよ。
何故って換金するのがとても大変なんです。普通の株は市場で売却できますが、信用金庫への出資金は売却できません。換金する方法は①誰かに(信用金庫のお客さん)譲渡するか②信用金庫に買取ってもらうか(自社株の償却)の2つしかありません。
そもそも譲渡するっていっても相手がいなければ譲渡できません、1万円とか2万円なら譲渡先をさがすのも問題ないでしょうが、200万円となると結構大きいですよ。また2つ目の信用金庫に買取ってしまうのは、総会の決議事項なので、すぐには無理です。そもそも社員総会なんて年2回くらいだろ。要するに引出しができないってことですよ。
余談ですが、ある私のお客さんが、信用金庫でお金を借りようと思って断られたので、出資金を担保に貸してくれ、とお願いしたら軽く断られましたよ。自分が発行した株に金銭的価値がないと言っているのと同じですよね。
『社長、下ろせないリスクを考えてやって下さいね』
『・・・・・』
積立預金、毎月少しずつ増えていくけど、
借入金利を上げるし、解約させてくれないし、借入の返済に回されちゃうし、挙句の果てに良く分からない株にかえられちゃう。変な商品。メリット全くないの?といえば、そんなことはない。
次回はやっていてよかった積立預金