接待事情 その3

銀行もお客さんを接待する。各支店に交際接待費の枠があってその範囲で過剰にならないような接待はする。
接待をするのは、だいたいお願いがある時とお礼する時だ。
以前話したけど、事前申請に許可を取らないといけないので、たまたま一緒になって
『払っておきますよ』とか。夕方少し遅くなってしまい
『たまには飯でも』なんて言うのはまずない。そもそも銀行員はセコイから自腹は切らない。

各支店の接待の予算は、支店規模、業績、利用実績で決まる。そしてその予算の利用先は支店長に一任されているから支店長も業績は頑張るし、予算枠確保のためそれを使い切ろうと頑張る。時々私的な飲み会の費用をそこから流用しようとするおバカな支店長もいるけどね。だいたい2月になると3月までに使わなければいけない予算のために支店長も飲む相手を探したりする。同一先で何回も接待すると問題になるから意外と選定は難しい。

こんなことがあった
創業時から40年、ずっと取引をしてくれているある建設屋のK社長。決して大きい取引ではなかったが愚直なまでに私のいた銀行を愛して下さっていた社長だった。
日頃のご愛顧の感謝と、たまたま期末の予算消化のためにそこを接待する事になった。でも後で聞いたら銀行から接待されたのは初めてだったらしい。
先方は社長と息子の専務。こちらは支店長と私。場所は都内の料亭。

開宴して20分くらいして支店長が席を外した時に、先方の社長が改まって
『ところで、今日の趣旨は何ですかね?』
『え?』
『銀行からの接待と言えば、取引打切りと相場が決まっている。今日は倅と覚悟してきた。』
思わず笑ってしまった。
『社長、そんな事一切ありませんよ。日頃のお礼です』
と何度も繰り返しやっと納得していただいた。まさか予算消化とも言えないし。

以前は接待してその場で取引解消を告げるという事もよくあったけど、今はそんな事はあまりない。だいたい取引を解消するのにお金をかけたりしない今は。
ひどい時はお客さんを銀行に呼び出してスパッと切ったりする。
だから取引を解消されるとか、あまり心配しなくて良い。
むしろ無理難題を飲み会の席で言うことがある。
次回はそのあたりの話をしよう。