積立この不可解なもの その5

『先生、積み立てってそんなにダメなのかい』
二杯目のハイボールを飲みながら社長が言ってきた。
前々回までだいぶ積み立ての悪口を言ったので、社長もちょっと考えているみたい。
でも積立預金は決して悪魔の商品ではない。積立預金が信用金庫の戦略であるならば、こちらも戦略的に積立預金をすれば良い。
その一つが前回話した目的の為の積立預金である。
それともう一つはコミュニケーションのための積立預金である。

信用金庫で口座を作ると、彼らは必ず積立預金を依頼する。もし作るならば、目的を明確にした積立預金にして、信用金庫に集金に来てもらう。面倒でも絶対に自動引き落としにしてはいけない。毎月必ず集金に来させて、現金を渡すのだ。その時、担当者を捕まえて、経営者自らが担当者と話す機会をつくるのだ。これはコミュニケーションの為の積立預金で意外と重要なのだ。

通帳を渡すとか、お金を渡す事務は奥さんや、経理の担当者がやるので良い。ただ信用金庫の担当が来た時に必ず経営者が会って欲しい。
経営者も忙しいが、毎月の集金日を決め、または何日の何時頃に来てくれと時間を決め、そこで10分でいいから話す。
『えっ?10分でいいの』
そう10分でいいのです。だいたい1日30件近く積立を集金している信用金庫のお兄さんは1時間も2時間も時間がとれない。だから1か月10分で良い。

担当者と話す内容は何でも良い。ただ間違っても日本経済の話などはしてはいけない。面白くないし、多分先方も知っているだろう。できたら業界の話が良いかな。担当者って意外と取引先企業をとりまく業界の事とかは知らない。だから意外効く。新製品がでたらサンプル等を持たせるのも良い。時々積立預金を集金しているのに、その企業の業種もわからない担当者もいる。だから教えてあげるのだ。
『うちは○○だよ』って
そんな他愛もない話が、後で融資を受ける時に意外と効果がある。

そもそも毎月集金に来ていると、半年に一回くらいは
『借りませんか?』と言われる。
こちらから何も言わなくても、向こうが言ってくるのだ。
要するに融資をお願いする立場からお願いされる立場になるのだ。
積立預金を上手く使い銀行との関係が深めていくのだ。